バックフリップのコツ(その2)

「バックフリップのコツ」では,既にバックフリップが出来る人に向けて, グラブフリップを行うためのコツを書いています. 実はそれ以前に,単なるバックフリップのコツも書いたんですが, それを読んで,トライした人が怪我をするとだなと思って, 今の内容に変更しました.
そのかわりと言うか,これからバックフリップに挑戦しようとしている方に向けて, 「初めてのフリップ」を書きました. この内容は,要するに 「WJトランポリンで練習してからにしとくのが無難だよ」 ってことでした. まだ読まれてない方は是非「初めてのフリップ」 を先に読んで下さい.

ここでは,WJやトランポリンでどんな点に注意して練習するのが良いかってことについて書きます.
GUEST BOOKでのkatsuさんとのやり取りが結構な量になったので,それをまとめて加筆しています.

まず,WJやトランポリンでのバックフリップ経験者に対して,私があまり心配せずに雪上でのフリップを 進められるのは,その人のWJやトランポリンでの技を見ていないとすると,次の3つのケースくらいです.
おすすめの順番も,この通りです.
ケース1については説明いりませんよね. ただ1つ注意して欲しいんですが, たとえランディングがフカフカの新雪だったとしても, 私はWJ,トランポリン,etc.でバックフリップの経験のない方には, 雪上でのフリップはおすすめしません.
あと,新雪に頭から埋まってしまった場合,誰かに引っ張り出してもらわないと, 窒息死の危険があるので,一人の時にトライするのは止めておいて下さいね.

ケース2が,私が考える,雪上でのフリップに向けた(実はフリップ以外の技にも通用するんですが) WJでの練習課題を現わしています. 色々な滞空時間と台の角度を経験しといた方が良いよってことが一つ. それから,人の技を良く見て,そこから「かけ」の向きや強さを読み取れるようになっておくべきでしょうってこと. この2つがそろっていれば,他のだれかが雪の台でフリップするのを見れば,「あれなら行ける!」とか 「あの進入スピードが必要だと,ちょっと無理だ」とか分かるはずです.
あるていど技が分かってきていて,自分で「行ける!」と思ったら,たいてい本当に行けるもんです. 逆に「駄目だ」と思ったら,実際に出来る実力があるかどうかに関わらず,駄目だと思う精神状態が足を引っ張ります. ランディングに自分で納得行くまでチョッピングを入れるとか,得意なエアを何本か跳ぶとかしてみて, 多少でも自信がわいてこないようなら止めておくのが無難です.
ところで,人がやるのを見ても,自分でできるかどうか全く見当がつかないとしたら, その技を安全に行う準備は出来てないと思って下さい. そういう技はWJかフカフカの新雪で試すべきです.

ケース3はトランポリン練習から雪に進む場合ですが, これは私がもっとも消極的にすすめるケースです. トランポリンで「真上に引き上げる」バックフリップが出来れば,体の使い方は,雪上できちんと踏み切る バックフリップと非常に近いです. 非常に近いんですが,板を履いて滑りながらのサッツがトランポリンには無いので, WJで板付きのサッツになれておいた方がはるかに安全です.
スキーがある程度できて,トランポリンで真上に引き上げるバックフリップをマスターした方なら, 多分WJで1日跳べば,板を履いてのフリップの踏み切りと,回転力の重さを体で覚えられると思います. 1日の休暇と交通費含めて1〜2万円程度の出費になりますが,首の骨を折る ことを考えたら安いもんでしょう.
それでも,どうしてもWJに行けないって方は, の2つの条件を満たせば,トランポリンと雪の台でのサッツの違いを, あまり危険でない程度まで修正できるだろうと思います.
実は板を履いてのバックフリップでは,きちんと真上に踏み切る方法とは別に, 上体を後ろに倒して板を前に抜くかけかたもあって,この技術(エアリアル用語で「スリング」って呼びます)を使うと, 回るだけなら明らかにトランポリンで真上に踏み切るバックフリップより簡単に回ります. しかし,この上体の倒しによるかけは回転力の制御が難しく,ランディングがきつくなります. 小さな台でこれをやると手や頭を台のリップにぶつける危険もあります. それはそれで一つの技術で,雪の状態が悪くて思ったより台への進入速度が足りなかった時や,小さな台で強引に 回す時等に使える場合もあります. だから全く悪いってわけではありませんが,(私の感覚では)あまり先に繋がる技術には思えません. 是非上に引き上げるサッツをマスターして下さい. トランポリンでも真上に引き上げることを意識して, バックフリップの練習を行うことをお勧めします. そこで ってのが出てくるんですが,床で自力でフリップが出来る人で, 台から多少でも上昇力をもらえるサッツが出来れば,何も言うことはありません. ガツンと踏み切ってギュルッと回っちゃって下さい.
次の「半回転まで頭を返さないでタックフリップ」ですが,雪の初めての台では, 回転力の調整範囲の大きいタックフリップがおすすめです. レイアウト(伸身)やパイク(エビ型)はタックフリップで回転力のあたりをつけてからやるのが安全です. なので,雪のテーブルトップ等でのフリップを第一目標とするならトランポリンでもタックフリップをマスターして下さい. ただしトランポリン自体の上達を重視するなら,タックの前にレイアウトを十分に練習した方が良いそうです.
で,「半回転まで頭を返さない」ってことですが,これは雪の台でサッツの瞬間に顎を上に向けてしまっては, きちんと真上に踏み切ることが出来ないというのが第一の理由です. もちろん世の中にはそれが出来る人もいるかも知れませんが,私は出来ませんし,多分ほとんどの人はできないと思います. 第二の理由は,かけの瞬間に頭を返してしまうと,その勢いで上体も後ろに引っ張られ, 上体の倒しによる回転のかけにつながるおそれがあるからです. そして最後に, フィギアスケーターやバレエダンサーがスピン(ピルエット)の際に半回転ずつ視点を固定するのと同様, こうした方が視界の確保が楽にできるからです.
最後の「グラブフリップ」ですが,トランポリンで踏み切りの際,腕を振り上げて, 振り上げた腕への膝の引き付け,足が手の位置に届く形でグラブができれば, それはすなわち,上体を倒さずに上に引き上げるタックフリップも出来てることになります. ですから,グラブフリップでは,手が足を迎えに行くのでなく,足が手に追いつくグラブを心がけて下さい. 自信をもってグラブフリップができるってことは,に空中で自分の体を制御できているわけで, 精神的な余裕も生まれているはずです.

初めて雪上でフリップを行う際には,自信と思いきりがとても大切です. ためらいは最悪です. ためらってサッツが中途半端だったり技を途中で止めたりすれば頭からおちる可能性大です. 別のページにも書きましたが, 往年のモーグルの帝王 E・グロスピロン の言葉に
「自信はトレーニングによって作り上げることが出来る.」
という言葉があります. トランポリンやWJでマスターした技は,かならず雪の技に繋がります. 技術的な面はもちろん,自信を育てるという面でもトランポリンやWJでの練習/遊びは非常に有益です.

最後に一言,このページを読んだだけで,雪でのフリップのコツが分かったと思って, WJやトランポリン練習を省略しようとしている方がもしいらっしゃったら, はっきり言ってそれは「過信」です.自信と過信を取り違えないよう注意して下さい.

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