腰痛について

またFSMLに投稿した メールの焼き直しですが,多少情報を追加していますので,そちらで読まれた方もどーぞ.

エアのランディング失敗による怪我を別にすれば,跳んでる人達が痛めやすいのは,膝と腰だと 思います.
もしあなたが膝や腰に痛みを感じたら,まずは医師の診断を仰いで下さい. 膝の場合は 靭帯がレントゲンに写らないためMRI撮影や,熟練した医師による動揺性テストや引出しテスト等の 徒手検査を受けることが望ましいです. したがって膝を専門とするスポーツ医に受診されることをおすすめします.
もちろん痛みが急性であれば,専門医を探してる時間も惜しいので,とりあえず手近な整形外科に かかられ,ギブスやシーネによる固定を受けるべきですが,その後専門医に再受診することを お勧めします.そうして専門医の診断(と競技復帰許可)がおりるまでは,山に行くのを控えて下さい. 1,2回の週末を惜しんだばかりに,その1シーズンを棒に振ってしまう可能性もあります.

しかし,腰痛の場合には,腰椎の骨折はレントゲンで診断がつきます. 椎間板(軟骨)はMRIで ないと写らないですが,レントゲンでも腰椎のズレから椎間板ヘルニアの診断がつく場合もあります. 歩くのがつらいほどの急性の腰痛であれば,とにかく楽な姿勢で横になって痛みが治まるのを待って, 早めにお近くの整形外科の門をたたいて下さい. 腰椎や椎間板に障害がある場合に「腰痛防止体操」 や筋力トレーニングを行うと十中八九,症状を悪化させます. 素人による強いマッサージでさえ 悪影響がありますので,急性の腰痛の場合には,くれぐれもご注意下さい.
安静時の姿勢としては,仰向けで膝や腰の下にクッションを入れたり,膝の間にクッションを挟んで 横向きに寝たり,腹の下に大き目のクッションを入れてうつ伏せに寝たりと,とにかく痛みが一番楽に なる姿勢を探してみて下さい.

さて,医師の診断の結果,腰椎や椎間板に異常が無いことが確認できたら,その腰痛は おそらくオーバーユースによる筋/腱の炎症という診断に落ち着くでしょう.
医師からはまず冷湿布を処方され,場合によってはアイシングを指示されるかも知れません. そうして痛みが落ち着いたら,温湿布や赤外線治療に切り替わり,しばらくの休養期間の後, 競技復帰を許されるでしょう. 医師に休養を指示されている期間中に,インドメタシン等の 消炎鎮痛剤で痛みをごまかして跳びに行くのはおすすめしません.

ところで,上記の治療は対症療法です. オーバーユースに陥った原因を取り除かなければ また同じことになる可能性が高いことを忘れないで下さい.

では原因をとり除くために何が出来るかがこのページの主題です.
手っ取り早いのは
という2つです. どちらもまっぴらごめんですね.

次に手軽なのがウェストベルトを利用すること.
モーグルスキーヤーが良く使っているのは, ShiekVALEO ですが, その他にもMcDavidPro等のサポータにも良いものがあります. 製品毎に色々と独自機能を うたっていますが,使い比べたわけではないので,どれがどう良いかは分かりません. 名の通ったメーカーの ¥10,000程度〜の製品を選べば,おそらくどれでも効果が有ると思います.

そして忘れてはならないのが,跳んだ後のクールダウン(とウォームダウン)をきちんと行うよう習慣づける ことです. エアのランディング(やコブの吸収)で腰に曲げ伸ばしの力が加わり,それを背筋や腹筋等の 体幹筋群で受け止める結果,まずそれらの筋肉が硬くなります.そして弾力性を失った筋肉が引き伸ばされて, 筋肉と腱が少しずつ傷つけらた結果の炎症が,腰痛になります.
ですから,1日跳んだ後に硬くなった筋肉をほぐしてやって,弾力性を回復させてやることで 腰痛を防止できます. より積極的には「1日跳んだ後」でなく,30分なり1時間なり跳んだら休憩を いれ,その時に腰や股関節のストレッチやマッサージを行えるとベターです.

最後に,腰痛の原因となる「腰に加わる曲げ伸ばしの力」を減らす努力をしましょう.

モーグルスキーヤーには特に典型的なんですが,スキーヤーはターンのGに耐え,コブを吸収する ために,大腿四頭筋,背筋群,腸腰筋 等の腰椎のカーブ(前湾)を助長する筋群(股関節の屈筋群)が 腹筋群,ハムストリング,大殿筋 等の拮抗筋(股関節の伸筋群)に比べて発達している場合が多い です,この筋力のアンバランスは腰痛の原因となります.
もしこの様な筋力のアンバランスに心当たりがある方は,腹筋群,ハムストリング,大殿筋を鍛えて, 大腿四頭筋,背筋群,腸腰筋 のストレッチを行うと腰痛の予防効果が期待できます.

こういったアンバランスが無い方は,上記の筋肉全てを均等に鍛えて下さい. 背筋,腹筋(腹直筋,腹斜筋) の体幹筋群だけでなく,エアのランディングの衝撃を吸収する主役である脚部の筋力アップも, エアによる腰痛防止には重要だと思います.
そして,エアのランディングの衝撃を,足首,膝,股関節をフルに使って吸収するようにしましょう. 衝撃吸収に上体も参加するなら,腰だけを折り曲げずに体全体をつかうよう心がけて下さい.

実は「上体を腰椎から曲げない」というのは,エアのランディングだけのこと では無くて,日常の生活から心がけるべきことなのです.
机の前に座って,机の奥の方にあるペンや消しゴムを取る感じで,ちょっと体を前に乗り出してみて下さい.

この時体が前に傾いているはずですが,その傾きはどこから始まっていますか?
尻から上全体が前傾している人には拍手.
腰(=腰椎=骨盤の上)で体を前に折っている人,注意して下さい. その動作が腰痛を招きます.
人間の体には解剖学上「ウェスト」という部位は存在せず,それにも関わらず「ウェスト」を 上半身と下半身の分岐点と考える思い込みによって,体を「ウェスト」から折りたたもうとする人は 少なくありません. その結果,「ウェスト」(多くの場合,第四腰椎と第五腰椎の間)は頻繁に曲げ伸ばしされ, この負担が積もり積もって腰痛の大きな原因となっているそうです.

特に腰痛持ちの皆さん,これからは上半身と下半身の分岐点は「股関節」と考えることにしましょう.
上体を前に倒す動作の起点は股関節です. 椅子に座っている場合には尻(=,挫骨=骨盤下部)です. 挫骨はゆり椅子の足の様な弧を描いていて,尻から上の胴体全体が挫骨の上で前後に揺れることが可能に なっています.

モーグルやエアのランディングでも,体幹部を一枚の板の様に固定して,脚の吸収動作が股関節 から開始されれば,腰を痛める可能性を減らせるはずです


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